履正社に勝った山田と高校野球の二極化と青葉学院中と

高校野球・秋季大阪大会3位決定戦で野球では無名の公立校、山田が強豪・履正社に勝利して近畿大会出場を決めた。

 

高校野球の報道において「番狂わせ」という見出しは定番だが、実際のところ近年の高校球界で真の意味での番狂わせは減っていると感じている。ニュースでは「番狂わせ」と報道されても、ちょっとディープに高校野球を観戦している人にとってみたら、下馬上を覆した相手も、そこそこ強化が進んでいる相手だったり、その時は不振でも、かつては有力校でベースの力はそれなりにある高校だったり。まあ「勝つこともなくはない」チームというケースがけっこうあるのだ。

 

だが、この山田の勝利は今や数少なくなった本当の番狂わせに感じる。先日は埼玉で花咲徳栄細田学園という高校に埼玉の準々決勝で敗れたが、それに続く驚き。今年はコロナ禍の影響でB戦ができなかった高校も多いと聞くが、それも影響あったりするのだろうか。

 

近年の高校野球は野球に力を入れる強豪校と、そうでない高校の二極化が進みつつある。その結果として、地区内の上位進出校や甲子園出場校もおなじみの高校ばかり、という状況が広がっている(聖光学院夏の甲子園連続出場記録などは、その象徴だと思う)。それだけに山田や細田学園の勝利は本当に貴重だ。

 

そんなことを考えていて思い出したのが、『キャプテン』の青葉学院中。

主人公たちのチーム、墨谷二中の前に立ちはだかる同地区の強豪チームである。

 

この青葉学院中、初登場時、「青葉学院の一軍は予選には出場しない。全国大会から(または次の段階の公式戦)」という設定だったのだ。

 

『キャプテン』の(何度目かの)読み直しをした大学時代、既に自分が中学・高校と野球部で過ごした実感として「いくら強豪といったって、予選で一軍がまったく出ないとか、あり得ないだろ。そこはやっぱりマンガ的」と感じた設定が、昨今の二極化の状況を見ていると、そこまで極端ではないとはいえ、笑えなくなってきているのかも、という考えが一瞬、頭をよぎったのである。

(注:『キャプテン』は中学野球のマンガですが、そこはいったん置いておいて)

 

実際、今の全国レベルの強豪校には、レギュラー9人使わなくても、地方大会上位にいけそうな高校、あるもんな。まあ、戦力、選手層「だけ」見れば、という話ですけど……いや、「巨大戦力」を持つ強豪校の場合、酷使を避ける目的もあって「夏の地方大会においてエースが本格稼働するのは16強、8強あたりから」といった起用は、実際に珍しくなくなってきている。そのうちエースが登板するのは準決勝から、なんてこともあり得るだろうな。事実、何年か前にエースの初登板が決勝戦というチームも存在したし。もっとも、そのチームは複数投手制を引いてて、戦略的意味合いが大きかったけど。

 

ともあれ、「高校野球の二極化」について考えていたら、今の高校野球の現実が、過去の野球マンガの「そこはマンガだから」という、演出のための誇張表現に追いついている、みたいなことを感じたわけです。
まあ、ちょっと言い過ぎですがね。


ちなみに前述の『キャプテン』のマンガ的設定を責める気はまったくありません。それとは別問題。名作であることに間違いはないし、面白さが揺るぐとも思っていません。


『キャプテン』大好き!