ウィーン郊外でオーストリアの高校野球、あるいは中学野球を観戦する

2年前、妻とウィーンとザルツブルクを巡るオーストリア旅行をした。妻の希望を汲んだ夏休み旅行だったので、いつもは旅先で野球を観る僕も、このときはお休み……のはずだったが、ついオーストリア野球のことを調べると、ちょうどリーグ戦の真っ最中。これは……と思い、結局、足を運ぶことにしてしまった。オーストリア野球を現地観戦できるチャンスなんて、滅多にない。妻よ、ごめんなさい。

旅程とにらめっこして観戦しようと思ったのはウィーンで開催されるオーストリア野球リーグのファイナルであるプレーオフ(チャンピオン・シリーズ)後半戦。ただ、ウィーンに着いて前半戦の結果をチェックしたらウィーン・メトロスターズがドルンビルン・インディアンスに2連勝! プレーオフは4戦先勝チームが勝利なので、インディアンスがあと2敗した時点でウィーンでのゲームはナシになってしまう(いわゆる「幻の第7戦チケット」みたいな話)。

そうなるとオーストリア野球を一度も目にすることなく帰国となってしまうので、何か試合はやっていないかとウィーン到着後に試合を探したところ、ウィーンから特急列車で30分ほどのウィーナー・ノイシュタットという街でU16の試合がナイターで開催されている。妻は昼の観光で疲れたから夜はホテルで休むというので、急遽スタジアムに向かった次第。

試合情報は下記の通り。

U16オーストリア野球リーグ

Wr,Neustadt Diving Ducks U16 対 Hard Bulls Youngsters U16

@Ducks field

U16のリーグ戦、いわばオーストリアの中学〜高校野球みたいな試合ですね。

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Ducks fieldでのオーストリアU16リーグ

会場であるウィーナー・ノイシュタットのDucks fieldは、野球がマイナーな国の球場ということもあるのだろう、つくりも簡素。ただ、そんなこじんまりとした球場なのに、食事を楽しめるテーブル席やビールスタンド気分で観戦できるスペースも小さいながらもしっかりある。

このへんはMLB文化の影響なのかな。なんか質素な感じが洒落てていいなあ。ちょっとでいいから日本の地方球場にもこうしたスペースがあると楽しいと思う。

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Ducks fieldの観戦スペース

で、試合はというと、レベルは正直高くない。半数くらいは初心者だろうか。野球がマイナースポーツの国のジュニア世代ですからね。
でも彼らが野球を続けて上手になれば国代表になりアメリカや日本の代表と試合をするような立場にグンと近づくわけで、それはそれで夢のある話だなと思いました。

興味深かったのは2点。
ひとつは両チームとも投手が1イニングずつ交代していて、両軍ほとんどの選手がマウンドに上っていたこと。
これは適性を見たり、野球の様々なポジションや楽しさをいろいろ経験させることも視野も入れているのかなー。

もうひとつは、僕の目が間違ってなければ、まだ1アウトの段階で5点入ったイニングがあったのですが、5点目が入った時点でそのイニングが終了、チェンジとなっていたこと。試合は16対3でダイビング・ダックスの圧勝。つまりブルスとの力量差がけっこうあったわけです。たぶん、このルールがなければ「いつチェンジになるのかな……」みたいな感じ。おそらくだけど、これはビギナーの選手が野球を嫌いにならないための工夫なのかな、という気がしました。「いつまで守ればいいんだよ……」となるのを防ぐというか。これって日本の少年野球などでもあるルールですかね?

こんな感じいろいろと足を運んだかいはあったオーストリア高校野球でした。
ちなみにプレーオフはめでたくインディアンスが盛り返し、メトロスターズ3勝、インディアンス2勝でその週末のウィーン決戦が決定。あ〜よかった。 

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タイの野球場へ行く

4年前の秋、タイへ1人旅をした。

野球好きゆえに、せっかくならばタイの野球場にも行ってみたい、と旅行前に思った。

しかし、タイでは野球はマイナースポーツというのが正直なところ。野球場もほとんどなく、1998年のアジア大会用としてバンコク近郊につくられたクイーン・シリキット球場がタイで唯一、本格的な野球場の模様。高校野球ファンならば2014年の18Uアジア選手権の会場といえば記憶している方もいるだろう。

タイ在住の友人に情報を教えてもらうと、たぶん試合も練習も行われていない可能性大。球場近くのタクシーの運転手でも「ベースボール・スタジアム」と言ったところでピンとこないのではないか、とのことだった。

幸い、スタジアムはRajamangala University of Technology Thanyaburiという大学に隣接した複合スポーツ施設、クイーン・シリキット記念スポーツ・スタジアムにあるようなので、まあ、どっちかを指示すればなんとかなるだろうとホテルを出発。球場周辺で一番メジャーかつアクセス方法豊富な施設が、かつてタイのメイン国際空港だったドンムアン空港だったので、そこまでは公共公機関を使い、あとはタクシーとすることにした。

友人のオススメ情報はホテルから直接タクシーで行くのが一番速く、お金もそこまで法外にはならないとのことだったが(タイのタクシーは日本人の感覚からすると本当に安い)、まあ時間もあるし節約できるところは節約しようかと。

というわけで空港行きのバスに乗るべくクルンテープ駅へ。インフォメでバス乗り場をたずねるがなぜか空港行きの電車の案内をされた。タイ語わかんねぇ!(というかおれの英語もダメなのだろう)
まあいいかと電車に乗ると地下鉄やBTSに比べるとボロくてノロかったけど、なんというかノスタルジックでこれはこれで風情があった。

ガタゴト揺られ40分ほどで無事空港に到着。すぐにタクシー乗車、大学名を告げると通じた。ただ、近い、といっても30キロほどの道のり。アクセスの悪さにこの国での野球の扱いを痛感する。日本という国で野球が好きということは、いろいろと恵まれているのだろうなぁ。

で、球場についた。なるほど、確かにまともな野球場ではある。高校野球でいえば、ちょうど各都道府県の準々決勝あたりまで使用されるくらいの規模、施設かなぁ。一応、サブ球場もあるし。
ただ、悲しいかな、おそらくあまり使用していないのだろう、内野はボッコボコで芝にもゴミがちょこちょこと。一応、スタンドや外周はスポーツセンターの清掃員が掃除はしていたが……まあ、こんなもんなのだろう。もしまた国際大会などがあればきっちり整備するだろうしね。

ちなみにスタンドには洗濯物が干してあって(笑)、誰だよ、と思って近づいたら隣のフィールドで練習していたホッケーチームのようだった。たぶんスコールで濡れた練習ウェアを乾かしていたっぽい。ある意味、贅沢な野球場の使い方(笑)。練習場や公式戦用球場の確保に頭に悩ませている日本の野球関係者からしたら、もったいない話である。

あれから4年。今はどうなっているのかなあ。

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2020年の高校野球秋季大会、ここまでのトピック

高校野球・秋季地区大会、ここまでの私的トピック。
こう見ると個人的には北信越大会が関心ポイントが多い。
最近はJ SPORTSの中継が増えたり各地でライブ配信があったりと、秋季大会も見やすくなりましたね。
 
北海道
→知内がベスト4進出
東北大会
→角館の選手を見たい
関東
細田学園の快進撃どこまで?
東京
→八王子北と城北
東海
→岐阜第一の阪口くん
加茂暁星と関根学園
福井商の復活なるか
→連合チーム(富山北部・水橋)が出場
近畿
東播磨がついにキタ!
中国
→浜田の復活なるか
→矢上&邑南町
 
四国
松山城南(とCM効果)
九州
津久見が安定してきた
 
ちなみに東京ではブロック予選の初戦で城東VS日野という、東西の都立の雄が激突するという対戦がありまして、結果は1-0で日野が勝利。トーナメントの妙、といえばそこまでですが、城東はちょっと気の毒だな、と思った次第。本戦の準々決勝、準決勝のカードといわれても不思議ではないマッチアップですからね。他にも帝京VS聖パウロ学園、日大鶴ヶ丘VS昭和なども初戦ではもったいないカードでした。
 
勝ち残っている高校のみなさん、がんばって〜。
 

コロナ禍に悩まされる千葉ロッテ・井口監督と国学院久我山という夢と

国学院久我山です」
中3最初の進路面談で担任に希望進路の高校をそう伝えたら、担任は「???」という顔をした。
「ですよね〜」と冗談であることを告げると、話は東北の田舎のごくごく一般的な進路面談へと移った。
・甲子園とオリンピックに出た後にプロ入りしたい
プロ野球が無理なら考古学者。民俗学も興味ある
という中2の終わりに考えた将来の進路プランA・Bに、歴史学民俗学に強い国学院大の付属校で野球部も強い国学院久我山はピッタリだった。
ついでに言うと「野球部のユニホームが好み」「早く家を出て東京に行きたい」のも心ひかれた背景。「女子の制服がカワイイ」と『投稿写真』に書いてあったことはナイショだ。
(「実際のところ国学院久我山の卒業生の多くは国学院以外の大学に進学する」という事実は後に知る)
ただ、冒頭のやりとりの通り、結局おれ自身、そんなに本気ではなかった。「中学卒業の段階で家を出るなんて無理」と勝手に自分で決めつけていたのだ。今、思えば絶対に不可能ではなかったはずで、そのへん、まだまだ知識も足りず視野も狭く、言ってみれば田舎者だった。
 
ちなみに分不相応な進路プランA・Bいずれも挫折した自分と違い、国学院久我山で甲子園出場、大学でオリンピックに出場した後にプロ入りするという、おれの中学時代の夢をまんま叶えたのが1歳年上の井口資仁という選手である。しかも、おれの夢でも想定していなかったメジャーリーガーとなりワールドシリーズを制覇する経験までしている。あらためて、とんでもない経歴の選手だったんだよなあ。
 
一軍の主力メンバーにコロナ感染者が続出した千葉ロッテ。急遽、2軍から大量の選手を昇格させるなど対応に追われた。週末には首位攻防戦も控えている。井口監督も頭が痛いだろう。この窮地をどう乗り切るか、手腕に期待したい。
 
 
 

履正社に勝った山田と高校野球の二極化と青葉学院中と

高校野球・秋季大阪大会3位決定戦で野球では無名の公立校、山田が強豪・履正社に勝利して近畿大会出場を決めた。

 

高校野球の報道において「番狂わせ」という見出しは定番だが、実際のところ近年の高校球界で真の意味での番狂わせは減っていると感じている。ニュースでは「番狂わせ」と報道されても、ちょっとディープに高校野球を観戦している人にとってみたら、下馬上を覆した相手も、そこそこ強化が進んでいる相手だったり、その時は不振でも、かつては有力校でベースの力はそれなりにある高校だったり。まあ「勝つこともなくはない」チームというケースがけっこうあるのだ。

 

だが、この山田の勝利は今や数少なくなった本当の番狂わせに感じる。先日は埼玉で花咲徳栄細田学園という高校に埼玉の準々決勝で敗れたが、それに続く驚き。今年はコロナ禍の影響でB戦ができなかった高校も多いと聞くが、それも影響あったりするのだろうか。

 

近年の高校野球は野球に力を入れる強豪校と、そうでない高校の二極化が進みつつある。その結果として、地区内の上位進出校や甲子園出場校もおなじみの高校ばかり、という状況が広がっている(聖光学院夏の甲子園連続出場記録などは、その象徴だと思う)。それだけに山田や細田学園の勝利は本当に貴重だ。

 

そんなことを考えていて思い出したのが、『キャプテン』の青葉学院中。

主人公たちのチーム、墨谷二中の前に立ちはだかる同地区の強豪チームである。

 

この青葉学院中、初登場時、「青葉学院の一軍は予選には出場しない。全国大会から(または次の段階の公式戦)」という設定だったのだ。

 

『キャプテン』の(何度目かの)読み直しをした大学時代、既に自分が中学・高校と野球部で過ごした実感として「いくら強豪といったって、予選で一軍がまったく出ないとか、あり得ないだろ。そこはやっぱりマンガ的」と感じた設定が、昨今の二極化の状況を見ていると、そこまで極端ではないとはいえ、笑えなくなってきているのかも、という考えが一瞬、頭をよぎったのである。

(注:『キャプテン』は中学野球のマンガですが、そこはいったん置いておいて)

 

実際、今の全国レベルの強豪校には、レギュラー9人使わなくても、地方大会上位にいけそうな高校、あるもんな。まあ、戦力、選手層「だけ」見れば、という話ですけど……いや、「巨大戦力」を持つ強豪校の場合、酷使を避ける目的もあって「夏の地方大会においてエースが本格稼働するのは16強、8強あたりから」といった起用は、実際に珍しくなくなってきている。そのうちエースが登板するのは準決勝から、なんてこともあり得るだろうな。事実、何年か前にエースの初登板が決勝戦というチームも存在したし。もっとも、そのチームは複数投手制を引いてて、戦略的意味合いが大きかったけど。

 

ともあれ、「高校野球の二極化」について考えていたら、今の高校野球の現実が、過去の野球マンガの「そこはマンガだから」という、演出のための誇張表現に追いついている、みたいなことを感じたわけです。
まあ、ちょっと言い過ぎですがね。


ちなみに前述の『キャプテン』のマンガ的設定を責める気はまったくありません。それとは別問題。名作であることに間違いはないし、面白さが揺るぐとも思っていません。


『キャプテン』大好き!